シン・春夏冬広場

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【映画評論】人間失格 太宰治と3人の女たち

 

この映画は公開されてすぐに、沢尻エリカのおいたが発覚し、ほどなく公開も終了してしまい、見る機会に恵まれなかった。恥の多い生涯を送ってきました。から始まる有名な本で、太宰治の人生そのものを読んでいると言っていい。彼が生きている中で、もてはやされ、堕落し、落ちていく様を描写している作品。人間失格を書いたその1か月後。愛人の山崎富栄と共に玉川上水に入水自殺する。そんな太宰を描いた映像作品である。

 

太宰を取り巻く3人の女性と、太宰の自堕落な生活を見ることが出来る本作品。キャストもそうそうたるメンバーだ。妻の津島美知子役は宮沢りえ、愛人1人目太田静子は沢尻エリカ、愛人2人目山崎富栄役は二階堂ふみ、主人公太宰治小栗旬が演じている。監督は蜷川 実花【にじかわみか】。写真家であり、映画さくらんの監督だ。海への入水自殺から太宰治が生還するシーンから始まっており、何度も自殺未遂を繰り返す太宰の様子が描かれている。酒に溺れ、煙草をふかし、女に溺れ、映画の中では1シーンに描かれているように思えるが、山崎富栄と一緒に生活する机の上に薬の瓶らしきものが描かれている。肺結核を患っており、ほとんど死にかけであった。

 

3人の女性に対する描写

3人の女たちと題する通り、女性の描き方はそれぞれ特徴がある。そしてそれぞれに花が添えられているように思う。妻の美知子はあやめ、静子は梅、富栄はアジサイ。美知子のはもしかするとカキツバタかもしれない。カキツバタ花言葉が幸福の便りであるからだ。万葉集では恋人を待つときに使われていた花とあるので、カキツバタだろう。静子は映画の中でも梅の表現がされているように、花言葉の気品、高潔にちなんでいると思われる。富栄は青いアジサイで辛抱強い愛をメッセージとして入れていると考えられる。

 

それぞれの女性に焦点を当てているため、描き方が独特で、さくらんにも出ていたような映像美の中に込められたメッセージ性を感じる。きらびやかないかにも情婦といった静子はずっと華やかで、2人がセックスしているシーンしか印象に残っていない。恋をすることを至上とし、愛をしらない女として描かれている。本人も世間知らずで奔放。自分で言っているが、恋は革命で、愛などいらない。しかしながら、子供が出来て、太宰の目が向かなくなると自分がいっていた恋だけで、愛など必要ないといったことが理解できずにいる。メタな表現かもしれないが、愛とは女性、子供に向けられた思いを含んでいるのだろう。この女性は斜陽のモデルになっていると考えられる。

 

妻の美知子は色合いとは程遠い状態からスタートする。終始暗い背景、暗い描写。子供を身ごもりながら、旦那はあっちにふらふらこっちにふらふら。借金だけはいっちょ前にこさえてくるし、愛人の間に子供を作る始末。映画の中で愛人との情事まで目撃する始末。はっきりいって何が彼女を支えているのかわからない。映画で描写されるのは、彼女がずっと太宰を支えていたこと。虫がとんでいると太宰なりの甘えを出しては、それを払うようにかいがいしく世話を焼く。家庭に帰るそぶりをしなくていい。帰ってこなくていい。何かを壊さないと作品が描けないのなら、それでもいいから立派な作品を残してくれと懇願しているあたり、太宰の才能に心底惚れていたのだと想像できる。太宰の自死した死体が上がると初めて着物の色が鮮明な青へと変わり、洗濯物を干すという異常行動に出る。きっともっとも印象に残したかったのは太宰の死と人間失格という本を結び付けた最後に立派な仕事をやり遂げたのだとそんな表現なのだと考えている。手紙にある通り、彼女をずっと愛しているというのはわかりにくいが、太宰なりの本心なのだろう。彼女の元に必ず帰るし、最後まで壊すことをためらった。

 

そして富栄。彼女はおぼこな女性として描かれており、おそらく作中の誰よりも若い女性をイメージしている。太宰に愛されることを望み、ずっと太宰に献身する。何が彼女をそこまでさせるのかほとほと理解に苦しむが、恋や愛というのはえてして他人では理解できない苦労を苦と思わない節があり、男性ながら自分の過去を思い出し、その献身を理解できる。理屈じゃない。理屈じゃないんだよな。太宰と家庭を持つことを望み、はっきりいって重い女だ。したっ足らずで若い印象を全体的に押し出している。服装は地味でまじめそう。そして、一途。そんなことが前面に押し出されている。最終的には太宰と入水自殺を遂げる。

 

映画と太宰の描写について感じたこと

何様口上だが、太宰にもっと焦点をあてて欲しかった作品だった。要約すると太宰はらりってて、放蕩の限りを尽くして自殺したと描かれている。おクズでございますとしかいいようがない形だったが、実際の太宰はもっとよくわからない感じだったのではないだろうか。亡霊のようで、信じられないくらい怪しく美しい男だったのではないかと思われる。わけのわからない魅力があり、しゃべり方も詐欺師のようで、説得力がありながらも破綻しているようなそして、どんどん破滅へと向かっていくようなもっと危うい感じがあったのではないかと思われる。そういった意味ではただの優柔不断のようにしか描かれていなかった。

 

三島由紀夫とのくだりはちょっと興奮した。一瞬で三島が出てきたとわかった。まじめそうな優男が出てきて、こういった知ってる人はわかるエピソードは嬉しかったりする。ただ、太宰はうなぎやが好きだったと聞いていた。うなぎやでずっと放蕩をしていたエピソードがあったので、それをもっと入れて欲しかった。

 

赤い風車はおそらく恐山の風車をイメージしており、死を連想させているもしくは子供達からさげすまれ、笑われているように描かれているので、社会的な死を連想させているのだろうか。そして、実際にしに行くときには白いぼたんの花。こうした色使いが非常にきれいな作品だった。わかりやすい作品ではあったが、もう少し太宰を描いてほしかった。女性が主役の話だった。

 

ぜひみなさんも見てみてくだい。

 

 

まった今度をおっ楽しみに~。ばぁい。